太陽と月


「上司として出会う前から、恋した人だった―――運命だと思った」



どこか切なげに、消えそうな声でそう話す主任

徐々に下がっていく視線の先には、今もきっと藍原さんがいる



「でも、再会した時には、もう彼女の側には星野支配人がいた。何度も何度も奪ってやろうと思った――簡単に諦められる程、軽い恋じゃなかった」

「――」

「でも、一緒にいる内に分かったんだ。俺がどう足掻いても、彼女はもう星野支配人しか見ていない。変わらない未来だって」




擦れてしまいそうな、その声にズキンと胸が痛む


その気持ちが痛い程分かるから

尚更、胸が痛い




「しばらくして・・・彼女は結婚して、二度と手の届かない人になった。彼女の結婚式の日、本気で諦めようとしたんだ――でも、どうしてもできなかった。俺にとって、彼女は太陽みたいな存在だったから」

「――」

「そのうち、彼女は会社を辞めて、子供を産んだ...それでも、俺の気持ちは変わらなかった――正直、自分自身の心が分からなかった。こんなにも身の裂けそうな思いをしてまでも、想い続ける価値があるのかって...」



そう言って自嘲気に笑った主任は、ゆっくりと天井を見上げた

まるで、流れ落ちる涙を留める様に




「でも、理屈じゃないんだよな」




そう言った言葉は、きっと何度も自分自身に言い聞かせた言葉だと思う



私も、そうだったから



普通に考えれば、叶わない恋なんてするもんじゃない


幸せになんてなれないし

その先に未来なんてない


いい事なんて1つもないのに

それでも、私達は想い続ける




ただ、好きっていう気持ちのまま