南様の言葉に思わずポカンと口を開けて固まる
え? 送っていくって、私を?
なんで?
思っていた答えが返ってこなかったのか、苦笑いをしながら私を見つめる南様
駐車場に向かっていた足を止めて、再び私の元へと一歩近づいた
「いつもお世話になってる、お礼」
「そ..そんな、お世話にだなんて」
「俺達と打合せの時は、いつも遅くまで付き合ってもらってるし」
「で..でも、それは仕事ですから」
「それでも、お礼くらいさせて?」
しどろもどろになる私に、穏やかな笑顔で微笑みかける南様
その笑顔を前に、何も言えなくなってしまう
――というか、お客様に家まで送ってもらうって、それってマズイよね?
いやいや。
マズイでしょ
「あっ、あの! お気持ちだけ受け取らせてもらいます――やっぱり、申し訳ないと言うか、なんというか」
「俺は全然構わないんだけど? むしろ、そうしてもらえると、ありがたい。迷惑じゃなければ」
「迷惑だなんて...そんな。で..でも、お客様に送ってもらうなんて...まだ、終電もありますし」
「う~ん。じゃぁ、こうしよう。車の中で余興の事について話しをするっていうのは? 俺もそっちの方が時間をロスなく使えるんだけど」
「でも、余興の相談は嘘なんじゃ..」
「急な相談はないけど、聞きたい事はあるよ」
一向に頭を縦に振らない私を見て、何か思案する様な素振りを見せた後、そう言った南様
もともと頭の悪い私は、そう言われると、そうなのかと思ってしまう



