バタバタとロビーを横切って、急いで外に出た
既に照明の落とされた玄関先は真っ暗で、思わずキョロキョロと辺りを見渡す
すると
「お疲れ様」
どこからともなく現れた南様
先程と変わらない笑顔で、私にすっと何かを差し出した
その手先を見ると、小さなペットボトルのお茶が1つぶら下がっていた
「え..あの?」
「働き詰めで、何も飲み食いしてないんでしょ?」
「え...はい」
「分かるよ。俺も一緒だったから」
そう言った南様の言葉で、以前式場の厨房で働いていた事を思いだした
やっぱり、どこの式場も同じ様に忙しいんだなぁ
「ありがとうございますっ」
「頑張りすぎて倒れないでね」
南様の言う通り喉がカラカラだった私は、オズオズとお茶を受け取った
そんな私を見ながら、満足そうに笑う南様
その優しさと気遣いが、なんだかとても嬉しかった



