太陽と月


「すいませんっ!! あっ、スーツにファンデーションがっ」

「いい。たいした事ないから」



一気に顔に集まる熱を隠す様に、勢いよく後ろに引いた

その瞬間、離れた大西主任の手の感覚が、肩に尾を引いて残る




「まだ残ってたんですねっ」

「あぁ、業者との打合せが長引いて――気づいたら、この時間」



小さく溜息を吐いて、腕時計に目を落とした主任

大きくて、男らしい手に思わず心臓が高鳴る




「瀬川は打合せ終わったか?」

「あ、はい。大丈夫です」




そんな私にフイッと背を向けて、自分のデスクに足を進める主任

腕まくりしたラフはスーツ姿が、なんともカッコイイ




「瀬川」




ぽーっと見惚れていると、不意に私の名前を呼んだ主任

その声で我に返って、背筋をピンと伸ばすと




「もう遅いから。送っていく」




大きな瞳で私を見つめながら、そう言う主任

そして、チャリッとカバンの中から車の鍵を取り出した