「みんな...上手に歩いていますよね」
そんな光景を見ながら、ボソリと呟く
なんだか、自分がとても滑稽に見えて
「当たり前の事なんですけど、誰にでもできる事なんですけど、どうして...私にはできないんでしょうね」
「――」
「真っ直ぐ歩く事すらできなくて、躓いてばっかり」
みんな上手に真っ直ぐ歩いているのに
私は転んでばっかり
前に進む事すらできない
上手に恋する事も
生きる事も―――できない
「――そう見えてるだけだろ」
すると、どこか低くて甘い声が世界に響く
隣を見ると、変わらず前を向いたまま足を組んでいる支配人がいた



