「なんで、カバンの中に消毒液が?」

「あぁ。子供がよく転ぶから持ってるんだ」

「あーあ・・・なるほど」

「まさか部下に使う事になるとは思わなかったけどな」

「も...申し訳ないですっ」



意地悪く笑った支配人の顔を見れずに俯く


子供か私はっ!!


なんだか恥ずかしくなって唇を噛むと、ストンと私の隣に腰かけた支配人

少し驚いて顔を上げると、目の前を過ぎて行く人達を見ながら長い足を組んでいた




「気にするな」




私の顔を見ずに、そう言った支配人に小さくお辞儀をした



何も言わずに、ただ真っ直ぐ前を見つめる支配人

その端正な横顔は、本当にどこかの俳優みたい



それでも、見つめている事がバレたら恥ずかしいと思って、支配人と同じ様に目の前を過ぎていく人達に目を向ける



みんな携帯をいじりながら歩いたり

ただ真っ直ぐ前を見て歩いたり

まるで何かに追われる様に、速足で過ぎていく



それでも、転ぶ事なく

ちゃんと、歩いている