「あの...大西主任?」
私の小さな声を聞いて、天まで届きそうな大きな扉の前、取っ手に手をかけた大西主任が振り返る
「どうした?」
「あの...聞いているとは思いますが...私、今までこういった仕事はした事がなくて」
「――」
「何の知識も経験もないんです」
―――そう。
結婚式場とは一切関わりを持った事のない私は、就職が決まってからも不安でいっぱいだった
短大の終わりになっても、未だに就職先が決まらず
どこの会社からも、いらない。と烙印を押された私
もはや、自分の自信というものを木端微塵にされた時期だった
そんな中現れた義姉ちゃんは、まさに天使――いや、神様
面接に落ちすぎて、行き詰っていた私への天の助け
どうする? と聞く義姉ちゃんの手を勢いよく掴んで2つ返事で頼んだ
――後先考えないのは、私の悪い癖
簡単な面接を本社で終えて、見事合格したはいいけど
それと同時に、一気に不安の種が花開いた
――私、接客なんてコンビニのレジくらいしかやった事ないのに、結婚式場なんて大丈夫なんだろうか
その不安はムクムクと大きくなり
そして今に至る
周りにプランナーの友達なんていないし
ましてや私の短大は普通の文系の大学
そっち系の知識なんて無に等しい
そんな私がいきなりプランナーの仕事なんて
本当にできるんだろうか?



