「すっすいませんっ」
我に返った瞬間、勢いよく背筋を伸ばす
すぐに自分の世界に陥ってしまうのは、昔からの悪いクセ
「大丈夫?」
「あ...はい。大丈夫です」
大きな瞳を少し垂らして、私を覗き込む大西主任
それでも、私が頷くとニッコリと笑って再び前を向いた
「こちらが、この式場の支配人。星野さん」
「星野だ」
そう言って、ニコリとも笑わずにデスクから立ち上がって私の前まで歩み寄ってくる星野さん
平均年齢は若いと聞いていたけど、こんな若くてイケメンな人が支配人だとは思いもしなかった
長い足を交互に出して、徐々に大きくなる、その背丈
見上げたその男性は、真っ黒な瞳で私を見下ろした
「瀬川、花音...ね」
その口から零れた声が心臓を震わせる
あまりのその容姿の整い様に、直視できない
思わず声を失っていると、不敵な笑みを浮かべてスーツのポケットから何かを取り出した星野支配人
そして、ゆっくりとソレを私の胸元につけた
「ようこそ、PORTAL AL CIELO へ」
不敵な笑みと共に私に贈られたのは、金色に輝くネームプレート
素っ気ない私のスーツ姿が、一気に華やかになった
「一緒に頑張ろう」
クイッと口端を上げた星野支配人が囁く様にそう言う
その姿に、最早頷く事しかできなかった



