「運命の人…」
そう呟いた私の言葉を聞いて、伏せていた瞳を勢いよく上げた莉奈さん
大きな瞳が微かに揺れている
その姿を見て、核心する
その事だって―――
「花音...知って?」
「大西主任が言ってた。もう、俺は運命の人に出会ってしまった後だって」
「――」
あの日の胸の痛さを今も憶えてる
掻きむしられる様な痛みに、息もできなかった
私は主任を見ているのに、主任は一度も私を見てはくれなかった
他の誰かを、ずっと見ていた
――分かっていた
どこかで気づいていた
主任の心の中に住んでいる人は
今も大西主任の心を焦がしているって
「――その、運命の人が、今の大西のすべてだよ」
だから、そう言われた時も
涙なんて出なかった



