莉奈さんの綺麗な声が、余韻を残して消える
まるで時間が止まった様に、目の前に座る莉奈さんを見つめた
考える事を止めた頭は、一向に動かない
「どう...して?」
無意識に出た言葉は、雑踏の中に消えていく
そんな私の姿を見て、もう一度瞳を伏せた莉奈さん
長い睫毛が暖かな日差しを浴びて、頬に影を作る
「大西は...きっと、この先何があっても、花音の事は好きにならないと思うから」
告げられた言葉は、あまりにも残酷だった
「好きにならない?」
「――うん。アイツは…アイツにはずっと心に想う人がいるから。今までも――これからも」
莉奈さんのそんな言葉を聞いて、いつかの夜を思い出す
〝――結婚はしない――″
もう誰かを好きになる事はないと言った大西主任
どこか寂しそうに呟いた主任の横顔を思い出す



