目の前に広がるフランス郊外の雰囲気を思わせるお城のような建物。
結婚式場という言葉でまとまらない位に素敵。
ゲートをくぐり足元の石畳の先にある洋館を目指す。
少し気後れしそうなほど立派な建物をじっくり眺めてから入口を入ってみる。素敵なエントランスを見渡し、とりあえずレストルームで簡単に化粧を直してから受付に向かった。
受付を済ませたとこで肩を軽く叩かれた。
振り向くと幼なじみの佑香だった。

「楓~久しぶり!!」

ニッコリ笑って抱きついてくる。

招待状が届いた時にこの結婚式で再会することを連絡してあった。
本当は前日に会ってお茶でもしたかったけど、私の仕事が入っていたので当日会場で会うことになっていた。

「あ~佑香元気だった?ゴメンネ、式場で会うことになっちゃって」

「ううん、いいよいいよ。嬉しい!もう会いたかったよ」

今まで実家に帰った時は連絡して会っていたけど、最近は帰っていなかったから感動に近い再会になった。
そのまま佑香にゲストルームに連れて行かれてウエルカムドリンクで乾杯した。
いつもは飲まないようなお洒落なカクテルを口にすると爽やかな味がした。

「楓会いたかったよ。もう最近帰って来てくれないんだもん!」

「ごめ~ん」

「何?男優先なの?」

佑香に疑いの視線を投げられる。

「違うよ・・でも、う~ん。まぁいろいろとね」

「何よ、結局男でしょ。ほら、前に言っていた好きな人。どうした?まだ友達のままなの?」

「うん、何も変わらず友達のままだよ。健吾好きな子できちゃったしね。私はすっかり相談役やってるよ」

佑香と真奈美には会った時にいろいろ報告してあったから多くを語らなくても分かってもらえる。

「もう!またそうやって女友達やっちゃって。ずっと好きだったんでしょ!彼はその人と付き合っちゃいそうなの?」

「う~ん・・彼氏がいる子だけどね、最近何となくいい感じっぽくなっているかな」

私の言葉を聞いて佑香の眉間にシワが寄る。

「楓・・そのまま何もしないで諦めるの?男友達になっちゃったから今更告白できない?」

「・・・う~ん」

「まだ昔のこと引きずっている?」

佑香の言っていることの意味は分かっている。佑香と真奈美は私の失恋を見てきたから。
男友達だった英輔に告白して振られて落ち込んだ私を全て知っている。
友達という関係に戻ることもできなくなった私をいつも慰めてくれた。
その後彼氏ができた時は喜んでくれた。
社会人になって好きな人ができたと伝えた瞬間2人は大喜びしてくれたけど、彼女がいて女友達としてそばにいることを話した時は心配された。

私が英輔に振られてからは好きな人とは女友達にならないと決めていたことを誰よりも知っていたからだ。
健吾が彼女と別れた事を話した時は、ちゃんと気持ちを伝えるように言われていた。
でもどうしてもできなくて、ずっと心配をかけていたし。

だから今健吾に好きな子ができたと伝えた時、佑香は言葉じゃ怒っているけど顔は悲しんでいた。

全て英輔に振られた事から抜け出せていないことを佑香はよくわかっているんだ。