華國王都は壊滅寸前であった。


 街中に煌皇が攻め寄せ、バリケードは破られ、

 幾重にもあった城門は崩れ落ちていた。


 精霊達は逆人に倒され、螺旋の坂道には血が川の様に流れた。


 排水口からの決死の突撃隊は順調に戦線を推し進め、

 城壁上層を制圧。

 
 正面門に待機していた工作兵が斧を持ち、根を刈っていった。

 
 遂には大門は破られ、本隊が突入するが華國の必死の抵抗により事態は思っていた以上の硬直状態に陥った。


 それも華國国民の事前の準備によるものであった。


 城壁を破られても王城まではかなりの距離と防衛陣が敷かれていたからだ。


 そしてボーワイルドには焦りの色が見える。

 
 何かを感じ場内に入らず、城の外に本陣をひいていた。

 
 時が戦況を動かす事を身に染みて知っていたのだ。

 
 そこへ早馬が駆けつける。

 
 一夜に二回もだ。

 
 一つは良い知らせだった。

 
 ワイバーンに乗った兵が急報を告げる。


「キュバイン殿の隊、東の渓谷を単独突破。

 
 また華國第一王子リンスをゼレイド将軍が撃破致しました」


「大義であった!」

 
 キュバインの事だ後一両日中にここまで来る。

 
 リンスが死んだ事は華國には大きい。

 
 さてこの情報、どう使おうかと思っている矢先だった。
 
 
 ボロボロの騎兵が一騎。

 
 ボーワイルドの前に転がる様に降りた。


「北西より敵の援軍、

 民間兵を吸収しつつ、

 ここへ例の部隊が。

 フェネック様の騎兵隊は全滅。

 撤退されたし」


 ボーワイルドは眼前の机にある全ての物を怒りまかせに叩き落とした。


「さて、どうする?

 どうすれば良い?」

 ここからは流石のボーワイルドも歴史の波に飲まれていくのであった。