「…最低限の知識は付けておけ。」 「え?」 「親父のセリフだ。 今も覚えてる。」 「…えっ、と?」 「万年4位のこの俺に、親父はそう言ったんだよ。 万年1位の芹沢に何が分かる。 “分かる”ことが苦しいなら、その苦しみを俺にくれよ。 それは贅沢な悩みってヤツだ、芹沢。」 少しだけ、本心が顔を出す。 もう長いこと見ていなかった、自分の本当の顔。 見てはいけなかった。 見せてはいけなかった。 なのに。 あまりにも、芹沢が優しく俺を呼ぶから。