記事には、
『天才、瀬名広斗に熱愛発覚!お相手は、3ー1金築ゆな!』
そんな…嬉しすぎる見出しがついていて。
事実無根なのにもかかわらず、見ているこっちが…照れてしまくらいだった。
セナくんがみたら…怒り心頭だろうな。
不可抗力とはいえ……、
申し訳ない気がした。
『どうしよう……。』
集まる人の数は、そうもんもんとしているうちに…
どんどん増えていく。
その人だかりを掻き分けるようにして…、一人の男が、掲示板の前に立ち憚った。
「くっだらねー…、こんなデマ載せたのはどこのヘッポコ記者だよ!」
「あ……、力。」
「え…。」
生徒たちの前に立っているのは……力。
新聞を外しながら、
「下らねーな、オイ。」
なんて……ぶつくさ言いながら、手に取ったその記事を…じっくりと見つめていた。
「よくできてんなー、この合成写真。きんのこの格好、かわいーじゃねーか。」
「3バカの安堂じゃん。」
「…うわー…馬鹿っぽい。」
そんな悪口もものともせず、
「うるせー、散れ散れっ!!」
周囲を…しっしっと……追い払う仕草をする。
「力の奴……かっこいーじゃん。ね、きん。」
「……うん、まあ…。」
ホント…、周りに影響されず、堂々とできるのが……羨ましい。
どうにかしたくても…行動に移れなかった私とは…違う。
その、力の視線が…記事から、あさっての方向へと移される。
「……お……?噂の瀬名のお出ましか…。オーイ、瀬名!!」
………!!
セナくん?!
私は思わず、くるりと……体を翻して。
彼らに…背中を向ける。
「お前がきんに構うからなあ、こんな根も葉もない噂がたてられんだよ。ホレ…、見てみい?誤解されるきんの身にもなれ。」
あわわ……、力、何てことを……!
「お前の口からハッキリ言うたれや!これは…デマだと。」
こっそりと……振り返ってみると。
新聞を手にしたセナくんは……
「馬鹿馬鹿しい。」
そう、バッサリと吐き捨てて。
力へと…押し返した。
「ほらあ…、見ろ!!わかったか、この野次馬どもめ!」
いたた……、
わかっていても…。案外ショックなのものだ。
「……ちょっと…!瀬名広斗!!」
今度は、モモちゃんが…
叫んでしまう。
私はいよいよその場にしゃがみこんで……、
見つからないように、と……ひたすら顔を隠した。
「……何?」
セナくんの、低い声が…廊下へと響く。
ギャラリーは一気に……静かになった。
「馬鹿馬鹿しいなんて言ってるけど…、これって…紛れもなく、アンタだし……こんな変な格好するのは、きんくらいだし……」
その変な格好…モモちゃんがさせたんでしょうよ~…!
「私からすれば、事実無根だなんて言い逃れは……卑怯だと思う。」
……………。
「記事の内容はともかくとして、その言葉ひとつで片付けようだなんて、周りは納得しても、こっちは納得なんて…してないから。」
「…………。……誰が…否定した?」
「……は……?」
「俺は別に、否定も肯定もしていない。写真が嘘なら……そこにいる変な女だって、真っ先に怒り狂うだろ。」
おっつ、私の存在…バレてました?
「きん、おま……いたのかよ?!」
力の追い討ちに、いよいよ逃げ場を失った私は……。
恐る恐る立ち上がって。
「どうも~……。」
笑顔で……振り返る。
「きん、じゃあ…この写真は……」
「……誤解だよ。ソレに……深い意味なんてない。」
「………否定……しないのか…?」
「………。」
セナくんは……写真をに写っていることを否定はしなかった。
面倒なことは嫌いなのに……、それよりも、
嘘をつくことの方が……嫌なんだ。
「セナくんが……私なんか相手にするわけないでしょ?だって、3馬鹿だよ?あれは、ただの……。………ただの……?」
………私のジャージの匂いを嗅いでいた、だなんて…言えないだろうよ?!
セナくんのイメージが…!
「………スキンシップだ。」
「そう、スキンシップ…、て、ええ?!」
セナくん、サラリと言っていますが…
それでフォローしたつもり?
「最近、俺の周りでキーキーうるさいから……少しからかっただけ。勝手に解釈してるけど…、いい迷惑だよ。発情期のサルを黙らせてやったんだ。」
「……………。」
「これで、満足か?」
セナくんはふっと笑って、
そのまま……その場を離れて行った。


