「瀬名くん、おはよう!」
彼女の弾む声が……
廊下の先に、響いた。
ふと、見上げると……。
セナくんは珍しく、廊下にたむろして……、友達と談笑している。
「おはよう。」
白川さんに返した挨拶の声が、思いの外爽やかで……。
挨拶すらされない私とは、いかに存在の差があるのかを……見せつけられた。
白川さんは、綺麗なのに、それをちっとも鼻にかけなくて。
大人っぽくて…いい香りがする。
これが私なら、
「臭い」って一蹴されるだろうに……。
この違いは……なんだろう。
神様は……不平等だ。
足を止めて。
絵になる二人に、暫く…見とれる。
「………あ、そうだ、お弁当…。」
渡すチャンスかとも…思ったが、入り込む隙など……ない。
第一、白川さんを前にして…そんなことをしようものなら。
どんな身の程知らずだと、思われてしまうんじゃないだろうか……。
「…………ん?」
そうこう、葛藤を繰り返しているうちに。
セナくんの友達と、私の視線とが……ぶつかってしまう。
途端に、その人はにっこり笑って。
ヒラヒラと……手を振ってきた。
無視するのもなにか、と…、手を挙げかけたところで、
白川さんと話していたセナくんの視線が……
ゆっくりと………
こっちに向かいそうになった。
『……まずい!』
私はわざと視線をおとして……
逃げるようにして、1組のその教室へと……入って行った。


