廊下をペタペタと音をたてて…
教室に向かって、歩いていく。
「……。お……?金築?お前、今日は早いな。」
すれ違い際に、塚本先生が…物珍しそうにして、じろじろと見てくる。
「昨日までの私とは…、違いますから。」
ふふん、と自慢気に…そういって返すと。
「靴!潰して履くんじゃないぞ。」
お得意の…アラ探しで対抗!
「……………。」
貼られたレッテルは。
そう簡単に……剥がれそうもない。
「………。なんの、めげるでない、ゆな!!」
今度は踵をしっかりといれて……
つま先をとんとん、と2回。
履きならしたところで。
「おしとやかに、おしとやかに……。」
自分にそう言い聞かせて、まるで一本の線上を辿るようにして……。
まっすぐに、歩いていく。
これぞ……、まさしくモデル歩き!!
ここは…、そう、ランウェイ!!
(あくまでも、廊下です)
颯爽と歩く道の脇から、観客から……やんややんやと歓声が起きる。
「おはよー、きん。朝からなんで競歩?」
「…………………。」
チッ…、夢…破れたり。
よくよく見れば、すれ違う生徒達が……
私を指さし、笑っているではないか!!
「…………。あれ…、金築さん。おはよー。」
そんな私のすぐ側で、
甘い香りが…ふわりと漂って。
あっという間に…過ぎ去っていく、華奢な後ろ姿。
「……おはよう。」
挨拶をかえすと、
振り返ったのは……
白川さん。
「………寝ぼけてる?反応、遅いよ?」
にこりと微笑んだその顔は……、まさに、小顔の……モデルさん!
スカートから覗く、スラリと長い足を…
スッと前に出しながら。
ランウェイを……独り占めしていった。
「………。女版セナくんか………。」
周囲は、羨望の……眼差し。
差を見せつけられた…気がした。


