私は、まだジャージを掴むセナくんのその手を、思いきり……払う。
すると……
どうだろう。
彼は、今度はガッチリと腕を掴み直して。
大きく…溜め息をつく。
「………な…、何よ。もう関わらないんじゃなかったの?」
一応凄んでみるけど、その動揺は大きく…
声が裏返ってしまった。
「…………。アンタさ、…どういうつもり?」
「……………?」
因縁つけられる覚えなどない……はずだ。
多分…、いや、絶対に。
不穏な空気を察したモモちゃんと、彼の友人は…
すごすごとその場を離れて行く。
「……。何よ…、私、アンタになんかした?」
セナくんは、何故か自分が着ていたジャージを脱いで。
薄いTシャツ…一枚になる。
露になった筋肉質な二の腕に…、思わず目を奪われてしまった。
ドッキン…ドッキン…
不謹慎な心音が鳴り響く中で…、それを切り裂くように、衝撃な一言が……
降ってくる。
「臭い。」
………???!!!!
にわかには……信じられない台詞。
ほっかぶりしているジャージに…鼻を付けて。
思いっきり…息を吸う。
昨日洗濯したばかりだし、何より着たばかりだし、
むしろ…、ふわりと優しい香りが…鼻をくすぐる。
………て、ことは…?
『もしや……、体臭?!』
ショックすぎて……まるで言葉が出なかった。
黙りこくる私を見兼ねたのか、それともこの風貌に嫌気がさしているのか…、おそらくその両者からだろう。
彼は苛立ちを隠せずに…
僅かに舌打ちする。
人情どころか。
デリカシーもゼロか!!


