その、張本人…。
瀬名広斗が……、
9組の男子に囲まれて。こちらに向かって、道を闊歩してくるのだから…。
セナくんが通る道を……みんなが、避けていく。
一目置かれている…特別な、存在。
「………みんな、何の花道を作ってるのよ……。」
鼻でそう笑ってやるけど、そう言う私も…
道の端っこへと、退ける。
「………きん、…聞いていい?アンタ……何してるの?」
陰に身を隠す私を引っ張り出すようにして。
モモちゃんが…ジャージの袖口を掴む。
「…もう関係ないんでしょ。堂々としてなよ。」
「まだ…顔合わせたくないの。」
「どうせ合わないから大丈夫だって。」
…………。ごもっとも。
「…ほら、さっさと行くよ?」
モモちゃんの催促に、
仕方なく…、ジャージをほっかぶりして。
彼女の脇にぴったり寄り添って。顔を下へと向ける。
「……………。」
すたすたと足並みを揃えて歩きながら……、
モモちゃんは、私が顔を上げられないのをいいことに…イタズラを施す。
私ジャージの両袖を…、鼻の下で結んでしまった。
「………きん、イケてる。」
親指を突き立てて…彼女はにやり、と…笑った。
「……………。」
『んな訳なかろうよ……。』
「お誉めに与り、光栄にございます。」
途端に、その結び目を……ぐいっと引っ張られて。
前に数歩、ふらついてしまう。
…怯んだ私の目の前に。
その距離……数十センチ、
セナくんの………
綺麗な顔。
「やっぱりアンタか……。」
「……………?!」
な、なな………、
何事?!
ほっかぶり忍者状態の私は、何度も瞬きをして。
敵の出方を……待つ。
「あ。金築ゆなじゃん。」
彼の隣りにいる男子生徒が……
私を指差し、くすりと笑った。
「………誰それ?」
おっと…?
「瀬名知らねーの、有名じゃん。3馬鹿3太郎って。」
「……さあ。」
「お前も大変だな、いろんなのに好かれて…。」
悪かったわねえ…、イロモノで。
皆まで言って下さって…、おかげさんで、自己紹介の手間も省けるわ。


