それから毎日のように練習は続いた。


学校が終わったらカラオケ店へ、カラオケ店に行けない日は誰もいない場所で。

どんなに用事があっても高橋は少しの時間を見つけては教えてくれた。




「結構いい線きてると思うよ橘君!ただやっぱり・・・まだ何か足りないかな。っていうかこのままだと、ただカラオケで聞かせられる程度の歌のままだと思う。心を動かす何かがないと、テレビになんて出れないよ」


「・・・分かってる」


簡単にテレビになんて出られない事は分かっていた。


俺はクリスマスにやる特番の歌番組でテレビに出ようと思っている。





だけどそれはかなりの歌唱力と、どれだけ歌で人の心を動かせられるかで決まる。


最近には少ないガチ歌番組だ。

カラオケで多少いい点数が取れるだけじゃ落とされる。




ましてやそこからプロの歌手が生まれる可能性もあるのだから、皆本気だ。



「じゃあAメロの所から歌ってみて?」


「~♪」


「いい感じ」


「ここ、サビのこの部分とか高い声じゃん?綺麗に出ないんだけど」


「そこは喉をこう・・・」




そして俺はようやく高橋の助けを借りずに1つの曲を完璧に歌えるようになった。



「すごいすごい!最初より全然良くなったよ!」


「おう」


「じゃあ次は違う曲で練習・・・と行きたいところだけど、もうそろそろ自分で曲作っていかなきゃいけないと思うんだ。もう音のベースは出来てるの?」


「一応。歌の練習とは違う時間で用意してた」


「さすが橘君!」