俺は圭介の言葉に頷き、最後にこう言った。


「分かった。ありがとう。その言葉聞けたからもういいよ。・・・俺は身を引く。もう立花の見舞いにも行かないし、会ったりもしない。そのかわり守ってやってくれ立花のこと」




圭介はそっぽを向いて、小さな声で「分かってるっつーの」と呟いた。


俺は微笑んだ後、静かにその場を去り覚悟を決めた。







「橘君」


階段の下にいたのは高橋だった。


俺は高橋に呼びとめられ、足をとめた。




「おう。圭介なら上にいるよ」


「ねぇ、身を引くの?桔梗から」


「なんだ、聞いてたのか」


「出ていける雰囲気じゃなかったから」


「・・・ああ。引くよ。だけどそのかわり俺は俺自身で立花へ決着をつける」


「決着?」


「立花が歌えなくなったかわりに、俺が歌うんだ」


「え・・・」


「俺の誕生日。その日に立花は歌をテレビの前でプレゼントしようとしてくれていた。だけど今声を失っている。練習もできないし本番にも声が戻ってくるか分からない。・・・だから俺があいつに歌をプレゼントするんだ」


「・・・それでもう本当に桔梗からは?」


「離れるよ。歌の事だって言わないつもり。たまたまテレビつけたらやってた程度が一番いいと思うし」


「駄目」


「え?」


「お願い。桔梗から離れないでよ。・・・あたし小沢君が好きなの」