圭介は柄にもなく落ち込んでいた。
理由は単に高橋の携帯の充電を使いきってしまったことなんだろうけど。
他にも何かあった気がする。
バイト先への電話が異様に長かったのも引っかかる。
「圭介、なんかあったら話せ」
「・・・別に」
「お前がいつまでたってもそのままだと調子狂う」
「今の俺がすっげぇ絡みづらいの自分でよーく分かるよ」
「自分の事は自分がよく分かるもんな?・・・高橋だって起きたらケロっとしてるよ。俺の見解では少し後悔してそう」
「適当な見解すんな笑」
圭介はそのまま屋上のフェンスの方まで歩いていった。
俺もその後に続く。
「母さんが事故にあったらしい」
いきなりの言葉に俺は唖然とする。
あまりにも軽く、あまりにも突然で。
「バイト先に連絡したら教えてくれた。そこのバイト先は母さんの知り合いの店なんだよ。・・・俺の携帯に電話しても一向に出ないからどうしようかと思ってたところに電話かけたって感じ」
「・・・」
「詳しい事聞こうとしたらちょうど充電も切れちゃって、俺どうしたらいいか分かんなくて。しかも今の俺らの現状だろ?すっげぇ落ち込んじゃってさ」
「それは無理に元気にならなくていい事だな。・・・悪かった。絡みづらいのは確かだけどしょうがない」
「翔太は一言多いんだよ笑」
その日の夜は結局屋上で過ごした。
圭介の母親の状態が気になりつつも、時間はゆっくり過ぎていく。
翌日になってその事を聞いた高橋は圭介にものすごい勢いで謝っていた。
その時の圭介の顔はあまりにも大人びていて、何故かひどく鳥肌がたった。
もしも俺が立花への愛は偽物だと圭介に言ったらどうなるだろう。
・・・その事ばかり考えるようになっていた。

