俺はあれ以来、立花の歌を聞いていない。


いや聞けなかった。


それだけじゃない。


立花と目を合わせるのもできなくなった。


近くにいる事さえ辛かった。

だから席も圭介と交代した。



圭介は喜んでいたけど、高橋は気に食わないと言って一週間ほど俺と口をきいてくれなかった。

それ以上に立花は表には出さなかったが、俺に再び心を閉ざしたようになってしまった。



俺に向けた笑顔も、声も、歌も。

全てがなかった事にされた気分に浸れた。




だけど今日。

俺は出会ってしまった。



「・・・っ」



彼女がいじめを受けている場面に。




「調子のらないでよ・・・」


「本当だよね。ってかなんで喋んないの?気持ち悪い」


「もう橘君に近寄らないで」


「転校してきた初日から結構いじめてたつもりなのにさ、なんで泣きもしないし誰かに助けも求めないわけ?あたしらなめてんの?」




ほとんど誰も来ない資料室で、彼女はいじめにあっていた。


しかも長い間。


ずっと一人で抱え込んでいたようだ。




「ほら、立ちなさいよ!」


「パンツでも脱ぐ~?」


「あ、それいいんじゃない?笑」



俺らには何も言ってこなかった。

まだ屋上で楽しく話せていた時も、立花はずっと一人で戦っていた。