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「桔梗、俺達別れよう」



突然の言葉。

あまりにも真剣な表情の小沢君に私は体を震わせた。




「なーんて。最初から付き合ってたかどうかも怪しいもんな笑」


小沢君はすぐにいつもの笑顔に戻って私にそう言った。



「・・・明日。最後にデート行かない?」



私は返事に戸惑った。

小沢君は好きだと言ったり、付き合おうと言ったり、別れようと言ったりもうどれがどれなのか分からない事ばかり言ってくる。



最後のデート。

それが何を意味するのか本当は分かっているけれど、翔太君がいなくなってしまった今、私をすごく支えてくれる小沢君がいなくなってしまう事が怖かった。



私は卑怯者。


小沢君の気持ちを利用して、好きでもないのに付き合った。


でも私を好いていてくれる小沢君と一緒にいる時間は嫌いじゃなかった。



心から安心していた。





だけど・・・。

私はそれまでも失いかけている。


きっと宙ぶらりんな気持ちのままでいたからだと思う。




「決定な!んじゃ、夕方の3時に駅の前で!」


私は慌てて言葉を交わすためのノートに『もう帰っちゃうの?』と書いて見せた。


「別れるってことと最後のデートのこと伝えたいだけだったから!寒いのに外に出てきてもらってわりぃな!ちゃんと暖かくして寝ろよ!」



小沢君は有無を言わさず帰っていってしまった。

突然起こった目の前の出来事を、私は家の中に戻っても受け入れられずにいた。