会場に入り、俺は楽屋へと通された。


この番組は全て生放送だ。

もうその時刻が一刻一刻と近づいてきている。



時計を見るたび、立花はテレビを見てくれるのだろうかと思ってしまう。


「気にするな。俺」




そう呟いた時スタッフの誰かが「番組始まりました」と楽屋に伝えにきた。



周りにいる他の出演者達は一気にざわつき始める。


緊張で何度も手のひらに『人』を書いて飲み込む人もいれば、音楽機器で最終確認をしているのかヘッドフォンをしている人もいる。


友達同士で出るのだろうかお互い手を握り合い励まし合う人もいた。




俺は一人でそれを見渡し、真っ白なルーズリーフを目の前に置く。


そして目を閉じて自分の出番を待った。










「きゃーっ終わったぁ・・・」


そう言って楽屋に戻ってきたのは、俺の前の前の出番の人。



「橘翔太さん。もうそろそろ出番ですのでこちらへ来てください」


スタッフに呼ばれ俺は立ち上がる。



真っ白なルーズリーフを机の上に置いたまま、本番のステージへと足を運んだ。