ぎゅっと握るその手は震えていた。

 強く握りすぎたせいか、血管が浮かび上がる。

 俯いてるから、どんな顔をしてるかはわからなかった。


「それにムカついて、また問題起こした。
 …でも俺は、音楽に出会って世界が変わった」

「世界が変わる…?」

「ああ。ある男の歌で、俺の世界が変わった。
 そいつは教えてくれたよ、辛いのは自分だけじゃない、苦しんだことのない人間なんていない、ってな」


 あ…そうか、前に光が言った言葉。


『辛いこと背負ってるのは、お前だけじゃない』


 って。

 その人に教えてもらったんだ。


「そいつの名前は…NaO。
 眼鏡と帽子で顔を隠してた。
 でもあれはきっと…お前の兄貴だ、藍架」

「は…?え、なおにぃ…?」