ところが、昼休みが終わって藤と一緒にイスで遊んでいた友人たちが戻ってきても、
藤はなかなか姿を現さなかった。
何かあったのか、心に引っ掛かってどうしようもなく心配していると、
授業が始まる直前になって、藤は山本と一緒に教室へ戻ってきた。
「じゃあ、後でな」
「うん」
藤を送り届ける形で山本が去ると、友人たちがふざけて藤に声をかける。
「山本とどこ行ってたんだよ、アヤしいなー」
「バカおまえ、秘密の花園、的な?」
ふざけ返す藤に、おまえらが言うとシャレになんねー、と笑いが起きる。
その笑顔は、いつもと全く変わらなかった。
だけど席につくときに、藤の袖口からちらっと白いシップが見えた。
私は次の瞬間、思いきり藤の襟首を掴んでいた。
「うっわあぁ、なんだよマッキー!」
びっくりするじゃん、と藤が振り返る。
「手首!」
「え?」
「手首、どうしたの?」
私の真剣な口調に、藤は軽いねんざ、と笑った。
「さっきの……イスの事故だよね?」
「事故っつーか、突撃行為というか」
自業自得だよと笑う藤に、私は心から後悔していた。
あのとき、私は藤の変化に気づいていたのに。
どうしてもう少し、藤の異変を汲み取れなかったのだろう。
「ごめん……気づけなくて」
小さな声でつぶやくと、藤は何言ってんの、と変な顔をした。
「たいしたことないから、気にしないで」
「でも、シップしてるじゃん」
「オオゲサなんだよ、一平は。つーか、あいつのするどさは異常。普通気付かないって」
「藤。どうしてイタいときにイタいって言わないの?」
私の真剣な問いを、藤はうすく笑ってかわして、そして背を向けた。
その一瞬の横顔は、見間違えようもなく、暗く冷たかった。
思いっきり、拒絶された気がした。
小さな藤の頑なな背中を見つめて、私はなんとなくわかった。
藤がこうゆう顔をするときは、なんかわずらわしかったり、これ以上干渉されたくなくて、
独りになりたいトキなんだ。
藤はなかなか姿を現さなかった。
何かあったのか、心に引っ掛かってどうしようもなく心配していると、
授業が始まる直前になって、藤は山本と一緒に教室へ戻ってきた。
「じゃあ、後でな」
「うん」
藤を送り届ける形で山本が去ると、友人たちがふざけて藤に声をかける。
「山本とどこ行ってたんだよ、アヤしいなー」
「バカおまえ、秘密の花園、的な?」
ふざけ返す藤に、おまえらが言うとシャレになんねー、と笑いが起きる。
その笑顔は、いつもと全く変わらなかった。
だけど席につくときに、藤の袖口からちらっと白いシップが見えた。
私は次の瞬間、思いきり藤の襟首を掴んでいた。
「うっわあぁ、なんだよマッキー!」
びっくりするじゃん、と藤が振り返る。
「手首!」
「え?」
「手首、どうしたの?」
私の真剣な口調に、藤は軽いねんざ、と笑った。
「さっきの……イスの事故だよね?」
「事故っつーか、突撃行為というか」
自業自得だよと笑う藤に、私は心から後悔していた。
あのとき、私は藤の変化に気づいていたのに。
どうしてもう少し、藤の異変を汲み取れなかったのだろう。
「ごめん……気づけなくて」
小さな声でつぶやくと、藤は何言ってんの、と変な顔をした。
「たいしたことないから、気にしないで」
「でも、シップしてるじゃん」
「オオゲサなんだよ、一平は。つーか、あいつのするどさは異常。普通気付かないって」
「藤。どうしてイタいときにイタいって言わないの?」
私の真剣な問いを、藤はうすく笑ってかわして、そして背を向けた。
その一瞬の横顔は、見間違えようもなく、暗く冷たかった。
思いっきり、拒絶された気がした。
小さな藤の頑なな背中を見つめて、私はなんとなくわかった。
藤がこうゆう顔をするときは、なんかわずらわしかったり、これ以上干渉されたくなくて、
独りになりたいトキなんだ。
