振り返ると、傘をさした華奢な女がオレを見つめ立っていた。 あれは紛れもなく、芽衣だ。 オレはその声を無視して歩き出そうとした。 でも、 「……っ、逃げないでよ!」 芽衣は跳ねる水に関係なくオレの方に走ってきた。 そして──── バサっと言う音を立てて傘が地面に落ちた。 「逃げないで……よ」 その細い身体がオレを抱きしめた。