一瞬、……一瞬だけど
一条くんがこっちを見た気がした。
すると、何やら歓声がして
「キャ〜!!聖くんがきめた〜!!」
「キャーー!!かっこいい〜」
さっき奪い去ったボールは神矢くんによってゴールに吸い込まれていった。
「ん〜なかなかやるわね、黒王子。」
理沙もそんなことを言った。
た、確かに……
無駄のない動きのドリブル。
少し乱れた髪だって、頑張ってる好青年っぽい。
キラキラ輝く笑顔はいつもと違う雰囲気で……子供っぽくて可愛い。
惜しげも無く神矢くんは女子たち笑顔で振りまく。
あんな笑顔を向けてくれる女の子は羨ましいな、なんて柄にもなく思ってしまう。
なんて一人、考え込んでいると試合が終わっていた。
0-1でC組が勝ったらしく、神矢くんはトロフィーを肩に担いでいた。
近寄ろうかなって思ったけど、女子たちが周りにいるせいで近づけなかった。
みんな神矢くんに自分のタオルを使って欲しいのかキャッキャ騒いでいた。

