「──というわけです」

「……」



ルカンさんとグレンさんのところに行き、レンさんは今どんな状態になっているのかを説明した。

私はこの間まで寝ていたベッドの上に座る。皆は椅子に座ったり壁に寄りかかったり好きな格好で聞いていた。


話し終わって口を閉じるけど、誰も話そうとしない。疑問やら驚きやらで話す気にならないのだろう。


口火を切ったのはルカンさんだった。




「あのバカ……何に失望したのか知らないけど、面倒なこと起こしてくれちゃって……」

「これから大きな戦争が起きるんでしょ?」

「はい」

「レンがいるのといないのとじゃ、戦力に不備が生じるだろうね。それほど昔っから強かったから」



ルカンさんは眉間にしわを寄せながら悪態をつき、グレンさんはため息を吐いた。



「だからレンは変だったわけだ……突っ込みがなくてつまんなかったんだよなー」

「その負のマークさんは何を考えているのでしょうね。敵にしては少々親切すぎるような気もします」

「だよなー……丁寧に自己紹介までして。でもよ、肝心な『奴等』の現状がわからねぇじゃねーかよ」

「うっ……すみません。聞くのを忘れてました」

「まあまあギルさん、シーナさんだって必死だったんですから」



ロイさんの言わんとしていることがわかったのか、ギルさんはバツの悪そうな顔をした。

確かに私は必死で……泣いてしまった。本当にあれは失態だったと思う。2人に心配をかけてしまった。


ルカンさんが眉をひそめて呟く。




「じゃあ、レンは敵になったわけだ……助かる可能性は低いと思うけど」

「どうしてですか?」

「そのマークとやらを追い出さない限りは助けられないわよね?でもその方法を知らないわ」

「確かに……やり方がわかんないとどうしようもないね……」

「……誰か知りませんかねぇ」




皆でうーん……と考えていると、ふいに空気が変わった。重いような、息苦しいような。

風景もなんだかいびつに見える。歪んでいる、と言えるかもしれない。



「その方法なら知ってるわよ」



そんな声が聞こえた。声の主を見るとギルさんだった。

……ん?ギルさん?




「あたしたちが教えてあげる」



またギルさんがそう言うと、ふっ……と彼の足元に魔物が現れた。私はさっと青ざめる。

なんで、なんでここにいるんだろう……?



「大丈夫よ、取って食ったりしやしないから」



ギルさんはぶっきらぼうに言い捨てた。その瞳はちゃんと私の方を向いて。

なんとなく周りを見渡すと、平然と魔物を見ているロイさんと、驚いた表情をしているルカンさんとグレンさんが目に入った。


それでも構わずギルさんは話す。




「あたしはマーズ。こいつの神類さ」




ギルさんは自分を親指で指した。私は驚愕した。



……もしかして、私たち適応者は神類の依り白(よりしろ)になることができるの?