僕が1年半前にトゥルークを訪れた当初は、まだ気づかれていなかった。

しかし、月日が経つにつれ、王族に動きが生じ始めた。巡回の護衛が、そこここでうろうろと頻繁に出歩くのを目にする機会が増えていった。

そして、さらに月日が流れ、僕が真相を掴みブランチの本部で公表することになる少し前、僕は噂話を耳にした。


母さん似の男がこの街に来ている、と。


僕はそのとき、パニックに陥った。バレることへの焦燥と、捕まることへの恐怖。

一刻も早くこの街から出なければと、まもなくして本部に早々に出発した。



僕は適応者の真相を本部に伝えた。すでに本部は僕のやっていたことを知っていたから、驚かれながらも受け入れてくれた。

そして、報酬として5つ星ランクの称号と、銃を渡された。銃は僕も見るのは初めてだったから、手に入ったことは純粋に嬉しかった。



けれど、安堵したのもつかの間、またトゥルークに行かなければならなくなった。

シーナさんを助けるには、あそこを経由した方が一番の近道だったし、貸家があって何かと都合も良かったから、そこを選んだのだ。


でも、後悔した。

トゥルークに着いてから尾行されているのに気づいた。とうとう僕に目星をつけたらしく、ずっと跡をつけられた。

それは2人も気づいていたようで、空気が重いように感じた。



そして、僕が黙っていることに嫌気がさしてたのか、ギルさんが僕から離れていってしまった。それなら、とことん僕も皆を巻き込まないように素っ気ない態度を取った。

それに、恐らく僕は捕まる……



捕まってしまったことは仕方ないことだと思う。けれど……


レンさんに仲間だ、と言われたときは、泣きそうになった。壁を作ったのは僕の方なのに、それでも引き留めてくれた。


嬉しかった。



だから、僕は大切な仲間を護る。自分がどうなろうと勝手だけど、これは僕の問題だ。


でも、やっぱり悲しい。




母さんは、もういない。