バタン、というドアが閉まった音を聞いたような気がして、シーナはぱちっと目を覚ました。




「うっ……」



上半身を起こそうとすると、突然頭に電光が走った。続いて、喉に来る重たい感じ。

ヤバい、と思いシーナは慌ててお手洗いへと駆け込んだ。



しばらく経って、シーナが出て来た。その顔はげっそりとしており、青白い。

頭が異常に重く、ふらふらとおぼつかない足取りで水を求める。


震える手でコップに水を注ぐ。そしていっきに飲み干した。

が、後悔した。上を向いたことでさらに吐き気が……


また彼女は駆け込んだ。



それを何度か繰り返しているうちに楽になってきたため、シャワーを浴びる。

ザーッと流れるお湯の音を聞きながら、昨夜のことを必死に反芻する。



(ええっと……みなさんと飲んで、喋って……喋って……えーっと……)



そのあとの記憶が一切ないことに気がつく。

シャワーの音を良いことに、うーん、うーん……と唸り続けるシーナ。

どうやって戻って来たのか、どうして飲んだ覚えがないのに水の跡が残ったコップがすでにあったのか。



まったく、思い出せないのである。



「それに、椅子がこっち向いてた」



本来あったところに無かった椅子。それはベッドに向かうようにして置かれていた。

そして、微かに残っていた温もり。香り。




(間違いない、レンさんがさっきまでいたんだ)



シーナはさっき聞いた音は恐らくレンが出て行った音だと確信する。

そうすれば、自分がなぜ部屋に戻っていたのかの辻褄が合う。



そう判断したシーナはシャワーをキュッと止めると、浴室から出た。

服を着替え髪を入念に拭いていると、ドアが躊躇(ためら)うように二度、小さくノックされた。

直感的にレンだと思ったシーナは、カチャ……とドアを開けた。


しかし、そこにいたのはレンではなかった。