『シーナ』




ケルビンの初代王妃。夫と共に建国に生涯を捧げた。華奢な体躯からは想像できないほどの力の持ち主で、周りが止めに入るときが多々あった。

それでも彼女は皆に好かれ、なりたい女性の理想像として密かに囁かれていた。

その内容は、夫の考えていることがわかること、子供たちがなぜか素直に言うことを聞くこと、乗馬が達者なことなど。


本人に聞いてもよくわからないの一点張りで、彼女の魅力を真似ようと当時の女性たちは奮起した。


彼女にはいろいろな武勇伝があり、国民の間で語り草となっていた。

例えば、妊娠しているにも関わらず子供たちと外で遊んだことや、よほど慌てていたのか城の2階の窓から飛び降りて外に走って行ってしまったことなど、夫婦揃って自由過ぎると半ば呆れられた。

しかし、そのようなことを言われても2人は笑うばかりだった。


静かに隠居生活を送っていられたのは、夫が難病にかかり介護をしなければならなくなったため。それは心臓が徐々に弱くなっていくというものだった。

刺激を与えては命に関わるとされ、心配をかけてしまっては身体に毒だと判断し、最期のときが来るまで片時も側を離れなかったという。




享年57。