「へえ、ご先祖様って凄かったんですね」

「……その一言で片付けられてもらっては困る」

「す、すみません……嫁入りした者にとってはやっぱり他人事みたいな感じで……」

「それでも、伝説の4人のことは知ってもらいたい。例え異世界から来たおまえでもな」

「わかってますよ。ていうか、もともとはこの世界の住人だったんですけど……地球は第2の故郷です。もちろん1番はこの世界です」

「まったく……自覚はあるのか?俺の嫁さんは」

「ありますよ!自覚が無ければこんなにケルビンの歴史のことを学びませんし。それに……」

「仕方ないか。シュヴァリートの姓を受けたからには、きっちり役目を果たしてもらう」

「はあ……なんでそんなに硬い言い方しかできないんですか……素直に嬉しいって言えばいいのに」

「あのなあ……俺は我慢してるんだ、欲求不満なんだ。男にとってこの時期は半殺しも同然なんだぞ」

「きゃーお父さん下ネタ言ってるよ?嫌らしいわねー」

「ちっ…………とう」

「はい?」

「あ、ありがとう……後継者という重い責任を子供に与えてしまう罪な親になってしまうが、付き合ってくれて……」

「なーに言ってるんですかいきなり!わたしは好きで共に歩むことを決めたんです。そんな感情を持っているのなら筋違いですよ。

親は親らしく堂々としていればいいんです。子供は大人の背中を追うものですよ。でも……わたしにも少し抵抗があるんです。紫姫の力を受け継いでしまわないか……」

「……いい。それでも。俺たちの子供にかわりはない。待望の子供なんだ、温かく迎えてやろう」

「はい……ありがとうございます!」

「ああ。幸せにならないと、あいつに顔向けできないしな」

「ふふふ……もう会えないですけどね」

「また、会うさ。笑って自慢してやる。おまえの逃した魚は大きかったのだと」

「ちょ、魚ってわたしのことですか?」

「それ以外に誰がいるんだ?」

「えー酷いですよなんか……って、聞いてます?あのー、なんで行っちゃうんですかー。妊婦は労(いたわ)るものですよー」




フリードによって創られた世界同士は偶然にも繋がり、新しい繁栄をもたらした。

それが良かったのか悪かったのかは誰にもわからない。


しかし、幸せをもたらしたことは事実。

世界は独自に構成され、独自の歴史を造り上げ独自の人々を産み出した。それを後世に伝えるのがその時の人間の役目。

そしてまた、悲劇も伝えるのも大事な歴史。同じ過ちを犯さないためにも、伝えなければならない。

歴史は目に見えない。しかし、形跡や痕跡、あらゆる傷痕はそこかしこに潜んでいる。見えなくとも感じることができれば、それだけで良いのだ。




────時間は常に、流れ続けている。何があっても。どんなことがあっても。立ち止まっていては、時間の流れは変えられない。

だから、進むのだ。互いに手を取り合い、一歩一歩を踏みしめながら。