助けを求めに他の子供は大人を呼びに行った。その間、落ちてしまった子供はひとり寒さに堪えながらじっと待った。

でも退屈と共に寒すぎたのか、子供はじたばたともがき始めた。動けば動くほど雪は沈み身体も沈む。服は雪で水分を含み体温を奪っていった。

子供がそれでも暴れていると、ふいに沈んでいた雪がさらにズドンと落下した。宙に浮く子供の身体。そのまま雪もろとも落ちてしまった。

そのまま子供は雪に埋もれるかと思いきや……埋もれることはなかった。なんと、子供が落ちたところには空洞があり、助かったのだ。

その空洞は家がひとつ分あるかないかの高さと広さ。でも、外よりは暖かかった。


そこに駆けつけた大人たち。その光景に唖然としていたが、ギルシードだけは瞳を輝かせていた。


地下が……地下が作れるぞ。


もう、それから彼は地下をどんどんと掘っていった。少しずつ広げて、固めて、ならせて。

その一生懸命さに心を打たれたのか、ひとり、またひとりと手伝ってくれる仲間が増えた。


なぜそこに空洞があったのかは未だにわからないが、それのおかげで農作物を作れるようになったのだ。それにはレンも喜び、彼も一緒になって日々掘り進めた。

その空洞は大きくなり、灯りをたくさん持ち込み暖炉も作って外と同じ環境を整備させた。まだまだ農作物の育ちは悪いが、改良を重ねていけばいずれは成功する日が来るだろう。


後に、そこは本当に畑となり、王族直属の畑となった。そこで働く者は『庭師』と呼ばれ、屈強な男たちによって繁栄していった。



一方、地上では家作りが急ピッチで進められていた。住居がなければ暮らせない。木々を開拓して材料を得て組み立て組み立て次々と作っていった。

適応者の中には鳶職や不動産屋をしていた者もおり、その者たちを中心として街を作り上げた。


さらに、牧場を作り隣国から譲り受けた家畜を飼った。隣国はブランチに魔物から助けてもらった恩があり、無下には断られなかったのだ。


着々と国作りは進み、ようやく国が成立した。


──その国はケルビンと命名され、後に本部があった山脈に囲まれた土地は首都となりセンタルと名付けられる。



本部自体は王城となり、レンやシーナが歴史を築き上げていく舞台となった。初代王のレン。彼は姓をシュヴァリートと明かし、ケルビン王家は代々その名を受け継いだ。

今まで姓は名乗られることはなかった。皆名だけ。レンはレンと、シーナはシーナと呼ばれたように。


それは、地位に自らを判断されることに抵抗があったからである。王家だから敬われ、平民だから見下される。そんな風潮は嫌われ、徐々に姓を名乗る者は減っていった。



しかし、そうは言ってられなかった。当時のケルビンは若輩の国。最初は国とは認められなかった。だから、汚名でも昔は少しばかり名の知れていた姓を明かしたのだ。でも、それでも周りの風当たりは改善されなかった。

レンはそれをなんとかしようと、地道な作業に移った。近くにある町や村を訪ね、困っている人々に手を貸すように使者を派遣させたのだ。

小さな町や村には医者がいないところも多く、そこに送り込むことで恩恵を受ける。そして、認めてくれた地域をケルビンの中に取り込んだ。

────その医師団の中にルカンやグレンも混ざり尽力を尽くした。


取り込むこと、それは支配ではなく、協力。手を繋ぎ共に歩もうという調印だった。足りないところは補い合い、助け合う。


それを何年も続け、やがては立派な大国へと発展した。その頃には周りの国からは認められるようになり、外交は進み暮らしも豊かになった。

交友により人に流れが起き、適応者関係なく交わり子供が産まれた。その子供たちは平和の象徴として、大事に育てられた。

大事に育てられた子供たちは聡明な大人へと成長しさらに国をより良くした。


それは何世代も続けられ、今も続いている。