「……ちょっと黙れってーの!マーズ口出しすんな!」

『右!右よ!ああ!後ろ!』

「……うぜーんだよーくそっ!」



戦ってるときなのにぎゃーぎゃーマーズがうるさい。

それに目の前の俺みたいな影も意外と強くて隙がねぇ……



無性にむしゃくしゃするんだよー!!!




『あんた、なにムキになってんのよ』

「誰のせいだよこんちくしょー!!!」

『ああ、だめだめ。がむしゃらにやったって当たりゃしないわよ』



まあ、そこは否定しねぇな。相手は俺の動きを読んでるのかさらっとかわす。

さすが、俺の遺伝子。

……って、感心してる場合じゃねー!


マジで攻撃当たらねぇんだけど。手応えがあったと思ったら向こうのダガーだし。足蹴りやっても間合いを取られるし。

俺よりも強いんじゃね?




『こらーっ!なに弱気になってんのよ!しっかりやんなさいよ!』

「わーってるっつーの。少し黙っとけ」

『……あたしには、あたしにはこれぐらいしかできないのよっ』

「見守るのもできることのひとつだぜ」

『……たまーに男前だから嫌になっちゃうわ』



やっと大人しくなったマーズに安堵しつつ、目の前の敵に集中する。

俺の動きに合わせて向こうも動く。ダガーで切りつけてもかわされるか受け止められるか。とにかく傷ひとつつけられやしねぇ。


さっきから何度もアタックしてるのに進展がないんだよなぁ。単調っつーか、面白みがないっつーか。


こうやって、間合いを詰めてダガーで懐を狙ってもひらりとかわされる。そしてカウンターで向こうのダガーが俺のところに滑り込んで来て危うし。

俺の仕事着に穴を開けようもんなら容赦しねぇかんな!これ高かったんだぞ!



……とまあ愚痴るが、何の意味もねぇ。ストレスが溜まる一方だ。




「うおっ……と」



余計なこと考えてたら顔面にパンチが飛んで来やがった。パシッと受け止めてからバッと離し間合いを取る。

やっぱ苦しい。拓けたところに移動したから幾分毒気の濃度は薄くなったが、喉がゴロゴロする。それで思うように力が発揮できない。

時間ばかりが過ぎていく。



なんか、打開策ねぇかなー。


あいつの弱点とかわかればそこを突いて勝てるのに。実は足を怪我してるんですー、とかな。

そんなことは滅多にねぇとは思うが、苦手なポイントはあるはずだ。



こりゃ見つけるまで、時間がかかるな。