「すみません…。あの、前田望と前田小太郎の場所は…」

私が説明する前に看護師さんは話をした。

「あなたが希さんですね…。ではこちらに…」

そう言って連れてかれた場所は2つの病室の前。

「あの…、ここは?」

私は答えを聞くのが怖かった。
でも聞かなきゃいけない気がしたんだ。

看護師さんは悔しそうな顔をして話しだした。

「右は望さんの部屋です。左は小太郎君の部屋です」

その答えは私に『どちらか選んでください』と言っているようだった。

「どうして一緒じゃないのですか…?」

私は泣きそうになりながら聞いた。

「それは簡単に言うとですね…」

看護師さんの言う通りだった。
本当に簡単だった。

兄さんはどうやら小太郎をかばって崖に落ちたらしい。
だから傷が深い。
小太郎は兄さんにかばわれた分傷が浅い。
たったそれだけの事。
だから病室を分けて治療を別にした。

「どちらからにしますか…?」

私は答えに迷った。
今行かなかった方にもう一生会えない気がして…。

「希さん…?」

「…に行きます」

看護師さんは聞こえませんでしたと言う顔をしている。
私は大きな声でもう一度言った。

「右に行きます」

そして兄さんの所に行った。

この選択は間違ってなかった。

そう思いたかった…。

でも…。
その事自体が間違っていた…。