俺は千沙がバイクの後ろにまたがったことを確認すると、エンジンをかけた。


背中に伝わってくる千沙の体温。


ウエストに回されている、色白で華奢な腕。


少しつつけば壊れてしまいそうなほど、繊細な気がした。


「まるでガラス細工だな」


そうつぶやくと「何か言った?」と、千沙が後ろから聞いてきた。


「別に。振り落とされんなよ」


千沙が落ちてしまうような運転するワケがなかったが、俺はそう声をかけ、走りだしたのだった。