その時は、左の袖の中にサバイバルナイフを持っていた。
彼は関西弁で、背が高く、茶髪の髪をしていた。
ターゲットの尾行を阻まれたため、アタシは非常にいらいらしていた。
「…なんのことですか?オニーサン。」
「ハハッ、トボケたらアカンでぇ?
左袖にしまっとるソレ、イギリス製のやろ?」
…コイツ、何者だ?
確かにこれはイギリス製のもの。
特注品だ。
だけどなぜ、コイツは分かったんだ?
「おじょーちゃん、そんなもん振り回すんやったら危ないからやめとき。」
コイツ、アタシのこと思春期に暴走したただの女子高生だと思ってんの?
あはは、笑っちゃうね。
「オニーサン、話聞いてくれる…?
アタシ、アタシねっ…!?」
「打ち明けてみぃ。
楽んなるで。」
あは、バカじゃないの?
ホントに信じちゃってる。
「ごめんなさい、ごめんなさい…!
アタシを見たら、殺すしかないのよ。」
男が充分に近寄ったところで、アタシはナイフを振りかざし男を殺そうとした。
しかし
パシッ
その手は呆気なく掴まれる。
「は…」
「楽んなるで。
吐き出してみぃ」
「なに言って…!
…ね、シネ、死ね!!」
何度もナイフを振り下ろし、突き刺そうとした。
でも、手首を固定されたアタシにできることはなにもなかった。
「な、んで…!
はなせ、離せよぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
アタシは狂ったように、人気のない道で叫んだ。
「ゴメンなぁ」
トスッと軽い音がすると、目の前はだんだんと暗くなっていった。
後頭部の下のあたりの、首もとがジンジンする。
あ、アタシ気絶させられたんだ。
そう気づく頃には、完全に暗闇に飲まれていた。


