・・・あぁ、そうだよ。

オレは、確かに薫子にマジに惚れてた。

・・・薫子に好きな奴が現れなかったら、

結婚を申し込むつもりでいたほどに…


「・・・西条に、薫子を任せていいんだな?」

「・・・もちろんだよ。薫子が幸せになってくれるなら、

それをする役目はオレじゃなくてもいい」


「・・・ホント、お前は昔からお人好しだな」

そう言ってフッと笑った龍之介。


「お前みたいに、腹黒じゃないんでね?」

そう言って、寂しい心の内を隠した。


「勝利祝いに、一杯付き合え」

そう言いながら、龍之介は歩き出した。

「…なんの勝利だよ?」

笑いながらそう言って、龍之介の後ろを歩く。



「あ、失恋祝いの方が妥当か?」

「…バカか、お前は」

「自分の社長に向かってよく言えたな」

「フン。今は社長と秘書じゃなくて、

幼なじみだからいいんだよ」

そう言って龍之介を追い越した。

・・・知ってるよ、お前は本当は優しい奴だってことは、な。