望side

色町のおかげで俺と雅人は沈黙から脱出することができた。今はみんなすることがなく、個々のしたいことをしている。ちなみに俺は席に座ってぼーっとしている。

ふと、色町に視線を移す。


――ドキ、ドキ…


鼓動が早くなるのを感じる。
やっぱり好きなのだと実感する。

…見た目だけで…判断しちゃったかな…

さっきの自分を思い返すとそう思える部分があるかもしれない。
実際、まだ好きな人は出来たこと無かったし、だからこれが恋なのか正直わからない。

「――む、望!」

「うわぁあっ!?」

考え事をしていてまったく気づかなかったらしい。雅人が声を大きくして呼んでいた。

「な、なんだよ…」

驚いたことを隠すようにぶっきらぼうに言った。

「……そんなに気になるのかぁ、色町のこと」

ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる。それは図星なわけだが、人に言われるとそういうことは隠したくなるのが人間の本能らしい。

「なっ!そんなんじゃねぇよ!」

顔が暑くなるのを感じた。きっと今の俺は真っ赤なんだろうな。

「照れるなって!一目惚れしちゃったんだろ?」

そういう雅人の表情はからかっていながらも優しげだ。きっと相談に乗ってくれようとしてるんだろう。
そういう部分があるから雅人は信用できるんだよな。

「…まだ、わかんねぇ」

「……ま。会ったばっかりだしな。とりあえず、さっきのお礼をきっかけに話しに行けよ!で、友達になってこい!」

無邪気な笑顔を向けられたらもう断ることはできない。
…まぁ、断る理由は無いんだけどな。

「わかったよ。…礼はしなきゃ、な」

そういって立ち上がったとき、ドアが開いた。