望side

『ガラッ』

教室に着いて早々、雅人が勢いよくドアを開けた。
おかげでクラス中の視線がこっちに集まる。

「あ……えーと……」

自分で招いてしまった失態に焦っているのか言葉が出ないようだ。しかたないから助けてやるか。

「初めまして、俺はこのクラスになった立花望。こっちが親友の桐谷雅人。みんな、よろしく」


これでどうだ?完璧なフォローだろ…



……ん?クラスの反応が無いな…まさか引かれた!?



――クスッ



焦っていたら笑い声が聞こえた。声の主に俺は視線を動かした。

主はすぐにわかった、だって口を両手で押さえながらクスクスと笑う女子生徒は一人しか居ないかったから。


『色町 鈴』だった。


「ふ、ふふっ…よろしく、立花くん、桐谷くん」

そう言って向けられた笑顔はなんともいえず、まるで天使のようで、目が奪われたようだった。きっと雅人も同じだろう。というかクラス中の生徒が今この瞬間に恋に落ちてしまったと思う。それくらい美しかったんだ。


つまり俺は…




その子に恋をした。