ふたりのガーディアン

「誕生日なのに仕事させちゃって悪かったわ。もう帰っていいわよ。お疲れ様」


「お疲れっす」


イチャさんにそう言うと、俺は事務所を後にした。


誕生日…か。


一瞬、俺の脳裏に蘇る一面の桜並木。


その色彩がやけに鮮明で、心臓がドクンと音を立てた。


フッと鼻で笑い飛ばして、頭の中から打ち消す。


俺があげたネックレスは、川に捨てちゃったんだしな。


もう、ないんだよ。


俺と優月を結びつけるものなんて。


でも、待てよ。


別れたあの日。


優月は、あのネックレスをつけていた。


どうしてだ?


俺と別れるつもりなら、瀬名のことが好きなら、あのネックレスをつけてるのはおかしい。


アイツは嘘がつけないヤツだ。


そうだ。


どうしてそれに気づかなかったんだろう。


歩幅を広げて、歩くスピードを上げる。


『蒼甫君』


優月…。


『約束、ね?』


もしかしたら…。


俺はもう走り出す足を止められなかった。