「人を愛するのが、怖くて怖くて仕方ないの。

いつ捨てられるのかと、不安が拭えないの。

だから私、裕樹の元から去った……」


「薫…」


薫さん、怖かったんだ。


瀬名君に振られることが…。


そんな…。


瀬名君、薫さんの事が本気で好きだったのに……。


「鈴木社長がコズミックを立ち上げる時期だったし。

私、社長を手伝いたかったから、裕樹とさよならするにはちょうどいいと思ったの。

そう思ったら決断は早くて、アパートを引き払って、社長の家に転がりこんだわ」


瀬名君が大きくため息をつく。


苦しそうな表情に、胸がキリリと痛んだ。


「だけど去年の夏、久しぶりに裕樹に再会して。

素敵になったあなたに、心がときめいたわ。

また一緒にいたい。

勝手だけど、そう思ったの。

それと同時に、お世話になった鈴木社長のために人肌脱げるとも思ったの。

あなたをモデルにすれば……」


薫さんの言葉を聞きながら、瀬名君がギュッと目を閉じた。


「でも、久しぶりに会ったあなたはすっかり変わってた。

もう、昔のように私を見なくなってた。

その原因が優月ちゃんだって気づいて。

私、悔しくて。

絶対手放すものかって思ったの。

たとえ、恋人でなくても。

モデルとしてずっと縛ってやるって……」


薫さん…。


あなたはそこまで……。