「優月っ、お前何して…」


瀬名君が、ビックリして立ち上がる。


「どうか、瀬名君を解放してください。

お願いします…」


私は両手をついて、頭を下げた。


もう、誰にも傷ついて欲しくない。


みんな、幸せになって欲しい。


ギュッと目を閉じていたら、薫さんのすすり泣く声が聞えて来た。


「優月ちゃん、顔を上げて。

お願い…」


薫さんの優しい声に、私はゆっくり顔を上げた。


薫さんは、さっきとは違う穏やかな顔になっていた。


「私ね、父親が自分の本当の親じゃないって知って、妹と自分をいつも比較するようになったの。

私は妹のように愛されてないんだって、その証拠を探すようになっていったの。

そう思いながら父親を見ると、本当にそんなふうに見えて来て。

そうしたら父親が憎く思えて、大嫌いになってしまったわ」


そう言って薫さんが視線を落とす。


「父親を嫌いな事が原因なのは、うすうすわかっていたんだけど。

私、どんな男性を好きになっても、誰に好きになられても、相手を信じられないの。

愛されてないって思ってしまう。

だけど、人一倍独占欲が強くて、なんだかコントロールが利かないの」


薫さんの言葉に、瀬名君が顔をしかめる。