「薫さん、よく考えてみてください。

誰があなたを大きくしましたか？

住まいを与えてくれたのは誰ですか？

ご飯を食べさせてくれたのは誰ですか？

学校へ行かせてくれたのは誰ですか？

大学へ進学させてくれたのは誰ですか？」


薫さんの目に涙が溜まっていく。


「お父さんですよね？

薫さんは、赤の他人にそこまでしてあげることが出来ますか？

愛してるから、娘だから出来るんです。

そうじゃないですか？」


そうだよ。


親はいつだって、子供に与えたいばっかりなんだ。


何の見返りも求めずに。


「自分ひとりで大きくなったような気がしてるかもしれないですけど。

そんなことは絶対ないはずです」


私も勘違いしていた。


うちは経済的に大変だから、自分でどうにかしなきゃって思ってた。


そんなの親の力に比べたら、微々たるものなのに…。


一人で生きているつもりになっていた。


頑張ってるつもりになっていた。


何にもわかっていなかったんだ…。