「なんだよっ。

そんな嘘で塗り固めるようなヤツ、妊娠だって嘘に決まってるじゃないか。

何を言おうが、もう聞く耳なんか持つ必要ない」


蒼甫君の言う通りだ。


私だって、どれだけあの人に騙されたかわからない。


去年の夏も。


今年の6月に会った時も…。


「だけどもし」


瀬名君の低い声に、私と蒼甫君は動きを止めた。


「それだけはホントだったら……?」


「瀬名君…」


「もしそうだとしたら…。

俺はやっぱり、償わなきゃダメだろ……?」


瀬名君の言葉に、泣きそうになってしまう。


きっと、嘘の可能性の方が高いはずなのに…。


それでも瀬名君は信じたいんだ。


薫さんのことを。



だって瀬名君が、




初めて好きになった人だもの…。