ふたりのガーディアン

「ふぅ」


ちょっと食べ過ぎちゃった。


だって、料理が本当においしいんだもの。


蒼甫君は瀬名君と話し込んじゃってるなー。


私は窓際から外の庭を眺めた。


今日は天気が良いから、窓際はぽかぽか暖かい。


「よう、付き人」


「……。洋平さん…」


今日の洋平さんは、真っ白いシャツに黒のジャケットを羽織っている。


無地の黒いネクタイを緩めに結んで、キャメルのパンツを履いている。


モデルさんだけあって、着こなしがバッチリだ。


「今日はメイド服じゃないんだな」


うっ、思い出したくない事を…。


「あれ、結構似合ってたよ」


嘘ばっかり。


絶対バカにしてる。


「今日の格好、なかなかいいね」


「えっ?」


「この色は、スモーキーピンクだな」


そう言って私のワンピースの袖を引っ張る洋平さん。


そうなんだ。


これ、スモーキーピンクって言うんだ。


知らなかった。


それにしても、洋平さんといるとなんだか落ち着かないのはどうしてなんだろう。


「あの、洋平さん」


この手を離して欲しいんだけどな。


「洋平『さん』はやめてよ。別に呼び捨てでもいいのに」


そう言えば、瀬名君も蒼甫君も洋平って呼んでるよね。


年上なのに、呼び捨てなんてしていいのかな?


「えっと。よ、洋平…君」


うーん。


呼び捨てなんてやっぱり無理。


「あーっ?まぁ『さん』よりかはいいか。それなら合格」


そう言って、洋平君が口角を上げる。


「じゃあ洋平君も、私のこと『付き人さん』って言うのやめてください」


実際、私は付き人じゃないし。


「名前、何だっけ?」


覚えてないんだ。


別にいいけど。


「た、竹内です…」


「ちげーよ。下の名前」


うー…。


「優月、です」


「優月、ね」


洋平君が目を細めて笑う。


蒼甫君が細めるのとはちょっと違っていて…。


蒼甫君が『陽』なら、洋平君は『陰』って気がする。