「ねぇ、神崎君。
ウチの事務所でね、ちょっと人手が足りない時とかあったら、ヘルプで仕事引き受けてもらえないかしら?」


「ちょっと、イチャさんっ」


私は、思わず席を立ち上がった。


イチャさんったら、蒼甫君をスカウトしてる。


そんなの、蒼甫君が承知するわけない。


「たとえば、ドラマのチョイ役とかね。雑誌のモデルとか。
ちょこちょこっとでいいのよ。
ホント、簡単なアルバイトくらいの感覚で」


もうっ!イチャさんったら、そんなのウソでしょ?


そんなの承諾したら、激しく売り込みそうで怖いよ。


「うーん。俺、サーフィンが忙しいんで。ちょっと無理っスかね」


ふぅ。良かった。


断ってくれて良かったーーー。


「そう。残念ねー。あなたなら絶対売れるのにー」


やっぱり売り込むつもりだったんだーっ。


「こうなったら、優月ちゃんっ。あなたが仕事を引き受けなさい!」


そう言って、突然私に鋭い視線を向けるイチャさん。


「えっ?な、何ですか?」


「女の子向け通販雑誌のモデルの仕事が来てるのよ。

優月ちゃん、出ましょうか」


「はいー?」


な、なんでいきなりそんな話にー?


「ウチの事務所、最近業績がピンチだから、雑用係をいつまで雇ってあげられるかわからないのよねぇ…。

引き受けてくれたら、継続できるんだけど…。

この仕事、事務所の仕事よりバイト代いいわよ~。

可愛い服が沢山着られるし、ファッションの勉強にもなるんじゃな~い?」


そ、そんなの私に出来るわけない。


でも、仕事クビになるのはイヤだな…。


ど、どうしよう。


引き受けた方がいいのかな…?