「何よ」


甲斐が怒ったような顔をして、俺の顔を見ている。


「あの子は渋谷の彼女でしょう?
アンタが連れて帰ればいいじゃない」


もっともな意見かもしれない。


でも。


さっきの神崎の顔…。


本気だったんだ。


絶対誰にも竹内を渡さないって。


その気迫が、すごかったんだ…。





成り行きだったんだけど。


俺は甲斐と一緒に帰ることになった。


中学の時に、何度か一緒に帰ったことがあったけど。


実に久しぶりだ。


「渋谷、良かったじゃない。優月ちゃんと付き合えることになって」


コイツは良かったじゃないと言いながら、ひとつも顔が笑っていない。


どう見ても、面白くないって顔をしている。


まぁツッコミはしないけど。


「しっかりつかまえておいてよね。そうしてくれないと、私が困るの」


「は?なんでお前が困るんだよ」


相変わらず、変なことを言うやつだな。


「もしかしてお前、神崎のこと…」


「はぁ~?蒼甫?

アイツに恋愛感情なんか、あるわけないじゃない。

小学生の頃から知ってんのよ。親戚みたいなもんだわ」


じゃあ、さっきのは何だったんだ?


竹内に嫉妬してるように見えたけど。


「俺と竹内がうまくいったら、お前にどういうメリットがあるんだよ」


俺は少しイライラしながら言った。


「あたしが今狙ってるのは…」


甲斐が怪しい目をして、俺の方を見る。