あの後、蒼甫君は授業に遅れたけど、ちゃんと6時間目の授業を受けに行った。


私は結局、放課後まで保健室で休んだ。


幸い頭はそんなに腫れていなくて、やっぱり貧血だったようだ。


最近あまり眠れてなかったもんなあ。


そんな中走ったから、ボールが飛んできた拍子に倒れちゃったのかもしれない。


放課後になって、保健室を出ようとドアを開けると、廊下で蒼甫君が待っていた。


蒼甫君のカバンと、私のカバンと制服を持って。


「着替えておいでよ。一緒に帰ろう」


ニコッと明るくそう言うと、私に制服を手渡した。


私は制服を受け取ると、また保健室へと戻り、着替えて外へ出た。


「じゃ、行こうか」


「うん」


二人でしばらく歩いていた時だった。


「竹内っ」


声のする方を振り返ると、渋谷君が駆け寄って来ていた。


「渋谷君…」


渋谷君は走って来たのか、少し息が切れている。


「もう歩いて平気なの?」


心配そうに私の顔を除き込む渋谷君。


「うん。もう大丈夫だよ」


私は笑顔で答えた。


「じゃあ一緒に…」


渋谷君がそう言いかけた時、蒼甫君が私の前にスッと立った。


「渋谷。俺が優月にボールぶつけちゃったんだよねぇ。責任取って今日は俺が優月を送るわ」


私の方から蒼甫君の表情は見えないけど、渋谷君の顔は良く見える。


渋谷君は何か言いたそうだけど、黙ったままだ。


「じゃ、そういう事なんでー。またな~。
優月、行くぞー」


そう言って、歩き出す蒼甫君。


私は振り返り、渋谷君を見つめた。


すると彼は複雑そうな顔をしながら、手を振った。


私もそっと手を振り返した。